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自分だけの秘密基地|BREWERY STYLE

自分だけの秘密基地|BREWERY STYLE

2018/09/14

思いを形に、自分だけの秘密基地。




◆「バーに暮らしているような家にしたい」
今回ご紹介するのは「理想のひとり暮らし」を叶えるために都内某所の中古物件を購入し、フルリノベーションしたNさん邸。玄関で私達を出迎えてくれたのは手入れの行き届いた靴たちと床に無造作に置かれたトランクケースでした。仕事柄、月に1~2度は海外出張で家を空けるというNさんが新居に越してきたのは約一か月半前。
「バーに暮らしているような家にしたかったんです」とのご本人の言葉通り、玄関に続くダイニングスペースへ進めば、お酒好きであることは一目瞭然です。磨き上げられたステンレスキッチン頭上、やや高めに設置された飾り棚に陳列するワインボトル、キッチンカウンターのグラスラック、バーボンや洋酒のミニチュア瓶、コルクのストック……。
「バーといってもバーテンダーがいる、ほの暗いオーセンティックなバーというよりはむしろ、夜のカフェとかダイニングバー。数年前からクラフトビールがマイブームなのですが、地ビールの醸造所やワイナリーに併設されているカフェやダイニングバーが理想のイメージに近かったかも」と語るNさん。イメージ通り、お気に入りの空間ができた甲斐あって「以前よりも早く家に帰るようになった」と、とても満足気です。



◆トグルスイッチは譲れない条件のひとつ
 お話をうかがう中、感心したのはNさんが思い描く仕上がりのイメージがいずれも具体的なこと。そう伝えると、「howzlifeにお願いする前に2件連続で失敗した、その学びの結果かも」と、こう振り返ります。
そもそもリノベーションを考えはじめたのは実は1年以上も前。賃貸では居心地よく変えたくても壁に釘一本打つのもままならない。そんな状況下、築30年以上の古いアパートに家賃をずっと払い続けるくらいなら、ローンを組んで本当に居心地がいいと思える自分だけの空間を手に入れたい。そう思い立ち、契約更新を期に中古物件のリノベを決意します。
そして物件探しからリノベまでワンストップで手掛ける複数社に依頼したものの、物件探しの段階で2件連続話が立ち消えになってしまい……。そればかりでなく、施工会社との打ち合わせでは理想像に近い施工事例を持って具体的に希望を伝えても「日本ではそれは無理です」とかなり、もどかしい思いをしたと言います。
その時から漠然と思い描いていたイメージは「倉庫をリノベーションした無骨な感じ/アメリカンヴィンテージ/ブルックリンスタイル」というキーワードに象徴される住空間。さらに譲れない条件として、トグルスイッチとブリックタイルを使うこと。そこで過去になるべく自分の希望のイメージと似た施工事例を手掛けた会社を探すべく、ネット検索をする中、howzlifeに辿りついたのだとか。
「まずは一度お話をと訪問したショールームを見て、ここなら任せて安心だと思いました」
決め手になったポイントは、コンクリートの階段、エントランスに併設されたカフェ、そして何よりもカフェの洗面所に設置されたトグルスイッチが理想と合致したから。うれしいではありませんか!





◆リノベデザインのプロセスと細部に込められた思い
 物件の広さ、間取り、予算。限られた条件の中で、理想のリノベデザインを描くには「プロに相談することが何よりの近道」だったと語るNさん。「その過程においては妥協も出てくると思いますが、譲れないポイントは最後まで押し通したほうがいいですよ」と当時を振り返り、アドバイスをくれました。理想のヴィンテージ感を追求すれば、当然コストは跳ね上がってしまいます。限られた予算の中で条件と自分の中の優先順位の折り合いをどうつけていくか。リノベデザイン成功の鍵はこのせめぎ合いの中にあるようでした。ここからはゾーンごとにNさんの譲れないポイントとBEFORE/AFTERのプロセスをうかがっていきます。


◆玄関
 配管の都合と予算の関係から段差ありのフロアタイルに落ち着いた玄関。出来ればモルタル仕様で入り口から段差のないフラットが希望だったとか。シュースペース収納棚の造作をオーダーする際、木とアイアンの組み合わせは最初からイメージしており、「安い素材でも構わないから、おしゃれで高そうにみえるように、とお願いしました」。廃材利用でコストを抑え、塗料で色のトーンを統一することでヴィンテージ感をキープ。


◆キッチン
「もっと広ければ、オープンスペースにはめ込んだ造作で全部業務用みたいな感じにしたかった」ものの、やはりそこは間取りとの相談で、壁づけのキッチンに。その代わり、賃貸では絶対にできない総ステンレスキッチンを実現。「どこかに使いたかった」というモルタルはキッチンの壁に選択しました。通常では換気扇が大きく、張りの出っ張りが際立つレンジフードは「出来る限りスタイリッシュにしたい」という希望を伝え、フラットレンジフードを採用。磨き上げられた、美しいステンレスキッチンをキープしたいとの思いから、シンクに食器を残して寝ることがなくなったと話すNさん。「いまのところは」と謙遜しつつも、スタイリッシュな空間はスタイリッシュな生活改善をも、もたらしたようです。


◆ダイニングカウンター
カウンターキッチンが理想でしたが、やはりこちらも間取りとの相談になってしまったゾーン。最初はコストダウンを考慮して天板の素材にラーチ合板を予定していたそうですが、とあるカフェで同じラーチ合板を使用しているテーブルを実際に見て「安っぽく感じられた」という理由から急遽、杉の無垢材に変更。増額になったものの、結果的には「妥協しなくて本当によかった」と高い満足感につながりました。
吊るしの照明にはハロゲンライトを選択。「いわゆるシーリングライトや蛍光灯は絶対に嫌だった」との言葉にNさんのセンスが光ります。そして「譲れない条件だった」という壁側のアメリカンスイッチ。グラスラック、その上に配置したボトルの飾り棚など、ひとつひとつのディテールに「いちいち格好いい」と撮影スタッフから思わず声があがるほどでした。収納棚には週末に友人を招いて料理の腕前を振るい、大好きなお酒を飲むために備えられた食器やコースターのコレクションがびっしり。「作ることも食べることも好き」というNさんですが、やはりお酒に合うおつまみ系に偏ってしまう、とも。パスタはホールトマトからソースを手作りするのも、お手のもの。


◆水回り
 グレイッシュなブルーとタイルの白で統一され、落ち着いた洗面所。以前は三点ユニットのバスルームでした。スペースを確保するためバスタブを失くし、シャワールームに改装しています。実はこの洗面所に設置した洗濯機のレイアウトが今回の最大の難問だったそう。玄関スペース、キッチン側の壁、洗面室建具の取り合いが関わるため、難しい状況から斜めの出切口はその苦肉の策として編み出されたもの。またシャワールームの後方に鎮座する電気湯沸かし器のタンクも「悩みの種だった」と振り返ります。壁を隔てたリビングスペースを確保するため、どんな工夫がなされたのでしょうか。


◆収納クローゼット&マガジンラック
 押入れをバーチカルブラインドで仕切っただけのシンプルなクローゼット。中にはクリーニングされたワイシャツがぎっしりと一列に並び、几帳面に折り畳まれた衣服がコンパクトに収納されていました。例の悩みの種はちょうど、このクローゼットの真裏にあたります。間取りの30㎡にはこのタンクも含まれていたため、実際の専用面積は26㎡辺り。バスタブを思い切って排除したのはリビングのスペースを少しでも広くしたいという理由もあったよう。その決断の甲斐あって、ちょうどマガジンラックが位置する壁面に約50㎝の奥行きが生まれました。


◆ガラスブロックパネル
 ここで注目したいのは壁に嵌め込まれたガラスブロックパネルです。採光や通風に「室内窓」を採用することが多い中、「ガラスブロックを格好よく使いたい」とNさんから要望があったといいます。それを聞いた担当プランナーの南部さんは新鮮に感じて、活用法を検討する際、とてもワクワクしたといいます。「結果的にインダストリアルな空間にとてもマッチし、新たな発見につながりました」とのことでしたが、実はこのガラスブロックのアイデアはNさんが唯一、ご両親に相談したことポイントだったそう。聞けば、Nさんのご両親は金沢で古い町屋をモダンに改装したり、築50年以上の民家を民泊にしたりとリノベーションの経験者であり、頼りになるアドバイザーでもあったのです。ガラスブロックからこぼれるやわらかい光は「弁当忘れても傘忘れるな」といわれるほど、曇天が多い金沢ならではの採光の知恵のようにも思えました。


◆リビング
 キッチンの一角とちょうど対となるリビングの端にせり出した2本の柱。マンション特有の柱の出っ張りとはいえ、何とか印象を何とかやわらげたい。そう考えた時、浮上したのが使いたかった素材のひとつ、ブリックタイルです。ウッドブラインド、革張りのソファ、フローリングのダークブラウンとしっくりマッチし、ブルックリンスタイルを醸しています。配管が剥き出しの天井も当初から希望していた無骨なイメージ通り。重厚感漂うフローリングが実は無垢板の部分がわずか1mmと聞いて驚かされました。「なるべく高そうに見える素材選びを丁寧に行うことでコストダウンをはかりました。ブラインドやパーテーションは『ツールボックス』などの通販を活用すればコストはかなり抑えられます」というものの、それはNさんの審美眼あってこそ。これからも海外でアンティークを探すなどしてちょこちょこ改善していきたい、と楽しみが膨らみます。

◆ベッド
 透け感のあるワイヤーと木目のパーテーションひとつで遮られたベッド。グレーの寝具ですっきりとまとめ、生活感が払拭されているのが特徴的です。「出来ればベッドルームは完全に分離させたかった」そうですが、その存在感のさりげなさにNさんの見えざる演出のなせる業を感じます。パンナムのトートバックやJFKのクッション、観葉植物のあしらいもさすがですが、部屋にあるグリーンは実はすべて人工素材。無機質なアイビーは生活感を極力排したい、というNさんの秘めたる意思を象徴しているかのようでした。「水やりが面倒くさくて」と言い訳しつつも、月に1~2度の海外出張を配慮しての、賢い選択なのでしょう。


◆ひとり時間を満喫するための、秘密基地?
 この家で過ごす時間のうち、いちばん好きなのはやっぱり夜だそう。好きなお酒を飲みながら、本を読んだり、ビデオ観賞したりするのが、Nさんにとっては至福のひととき。
もちろん、友人を招いたホームパーティも楽しいけれど、やはり、この家はひとり時間を心地よく過ごすための場所にしたかった、とのこと。
実はここ最近、howzlifeにはNさんのように「自分だけの空間をつくりたい」と30代の単身男性からのリノベ依頼が増えているのです。ライフステージが変わって家族が増える前に、自分の思い通りの空間でひとり時間を存分に満喫したい。そのリクエストはやはり圧倒的に男性からだといいます。まるで子ども時代に憧れた「秘密基地」を夢見るみたいに。
最後に、誰にも侵されることのない「Nさんの秘密基地」の満足度を尋ねてみれば。「100%満足です」と、うれしいお返事が返ってきました。

(◎写真 花井智子 ◎ライター 砂塚美穂)