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想い紡ぎ合わせて・spinning gather

想い紡ぎ合わせて・spinning gather

2019/09/15

「この家は素晴しいチームワークで作り上げた家」


今回ご紹介する物件の主人公はT夫妻(夫Hさん、妻Rさん)、長女Sさん、長男S君、次男R君の5人です。結婚25年目、長女もそろそろ社会人になるし、Hさんの定年へのカウントダウンも始まったし、というタイミングでにわかに動き出したT家のマイホーム購入計画。自転車で通勤できる範囲内であること、予算内で収まることを条件に物件探しをしていくうちに、普通のオーソドックスな新築マンションを購入するのではつまらないと思い始め、リノベを決意。
インテリア会社主催のセミナーやリノベ講座に複数参加した後、恵比寿のショウルームを見て「その場でハウズライフさんに即決しました」とR夫人。

築43年のマンションメゾネットを購入した決め手になったのは、広大な敷地内の集合住宅地に、SFみたいな雰囲気のある団地が立ち並んでいて格好いいと思ったこと、建物同士の距離感が遠いことが魅力だったという理由から。

引っ越しから約2年。「住み心地はどうですか?」と今回お尋ねしたところ、R夫人からこんな言葉が飛び出しました。

「この家は担当デザイナー南部さんを中心としたチームでつくりあげた家という実感があります。打ち合わせの度に間取り図を持って、『いまこんな感じの進捗具合なんですけど、ここに合う壁紙ありますか? この部屋にはどんな照明が似合いますか?』とワルパさん(壁紙専門店)、シャークアタックさん(アンティーク・ビンテージ家具店)の担当者を訪ね、相談に乗ってもらったことを思い出します。ハウズライフさんを起点に発展的なつながりができた。そんな素敵なご縁に恵まれたことが何よりもよかったですね」
R夫人が間取りやテイストは家族から一任されていたとはいえ、もちろん家族全員、ひとりひとりの思いがあってこそのチームワークです。思い描くイメージや叶えたい希望は、やはり家族5人5様だったはず。
今回、ひとりひとりのお話を聞いていく中で、いちばん印象的だったのが長女Sさんのこんな言葉でした。
「家族みんながいる場所をつくってほしい。前の家もいつもみんないっしょだったから」
実は新しい家が完成したと同時に家元を離れ、独り暮らしを始めたSさん。夏休みで久しぶりに帰省していたSさんが取材中、漏らしたのが「早くこの家に帰りたい」でした。
このワンフレーズほど、この家の居心地のよさを物語るフレーズはないかもしれません。

ここからは早速、R夫人にそれぞれの部屋に込めた思いを解説してもらいながら、細部をみていきましょう。

■リノベのツボ ~T夫妻のCASE STUDY~
1.リノベはチームワーク。迷ったら、プロに聞く
2.譲れないポイントを決め、それを起点に全体を設計する
3.手持ちの家具ありきで、デザインを考える

シックな統一感を保ちながら、寄せ集め(コラージュ)する技術

◆玄関
扉を開けた瞬間、視界に飛び込むホールに漂う異国情緒。シノワズリーのようで、モロッコ風でもあり、それでいて和箪笥が違和感なく馴染んでいます。聞けば、この箪笥はR夫人の実家にあった思い出の仙台箪笥なのだそう。「実家の父が子どもの頃に私がこの箪笥を気に入っていたのを覚えていて『家を建てるなら』と送ってくれたんです。最初はこの家の雰囲気と合わないかなと思っていた」そうですが、驚くほど、見事にマッチしています。

異なるテイストを取り入れつつも、統一感をキープしている夫人のセンスの良さに思わず、脱帽です。玄関正面に位置する赤味がかった色調の扉が金色の壁紙とモルタル仕上げの床とシックに調和しています。なんと、扉の中はボイラー室でした。

「もともとはモールディング調のアンティークを探して」いたそうですが、この扉と鏡下のコンソール、そしてシューズインクローゼットは造作に。家族5人の靴を収納する5段の可動式棚は動線と使い勝手を考え、「大きな靴がしまわれたきりにならず、扉はつけなくて正解でした」。

「そういえば、鏡の上に壁紙の鳥がくるようになど、ずいぶん難題をお願いしました」と振り返りながら、部屋へ続くエントランスの階段を上っていきます。ライティングが妙にエキゾチックな隠れ家的雰囲気を醸して、訳もなくワクワクしてしまいました。
宅配便の配送員が「このマンションの中でTさんのお宅の玄関がいちばん素敵です」と言い残して帰ったこともあるそうですが、納得です。

この玄関に合うコンソールをイメージしたり、ディスプレイを考えながら古美術屋で香炉を購入したり、アンティークショップで掘り出し物を探した時間は「人生でいちばん楽しかった」と満面の笑みのR夫人。

新婚時代から愛用しているお手持ち家具を活用した空間デザイン

◆キッチン&ダイニング
「新婚時代に購入した食器棚とダイニングテーブル、椅子は捨てたくないよね」と25年間、家族の食卓を見守り続ける愛用の家具を基調に、使い勝手のいい棚を造作したキッチン。
「朝日が見える明るいキッチンで家族のごはんをつくりたい」というR夫人の願いを叶えるべく、キッチンカウンターは東を向いています。バルコニーを臨むダイニングは柱を囲うレンガタイルがいいアクセント。もともと天井は躯体表しが希望でしたが、いざ天井を剥いでみると目隠しが必要な汚れが目立ったそう。そのため、あえてキッチンカウンターや造作棚とバランスのいい木目板を天井に貼ることに。理想と現実のせめぎ合いをどう解決するか。実はこの辺りにも家主の個性がにじむようです。「グローエの水栓金具をとりいれるのが理想」でも「レンガタイルは譲れない」。優先順位を考慮し、T家は本物のレンガを使い、予算を投じることを選択。一方で、キッチンマットを全面に敷くことを前提に床の予算を抑えるなどメリハリを意識した、とも。

優先順位は見た目の美しさか、生活動線か

◆リビング
リビングでひときわ目を引くのが次男Rくんのリクエストでつけられたハンモック。
「トイレに立つと奪われている」家族みんなの特等席です。「ソファでくつろぎながらテレビがみたい」「テレビを見ながらごはんを食べたい」こうした家族の要望を叶えようとすると、テレビの大画面が部屋の入口正面から最初に目に入る位置に限定されてしまう。「それが悩ましかった」とR夫人。入室の際、最初に目にする場所の美観にこだわるか、便利な生活動線か。天秤にかけた結果、「美しいもの」が最初に目に入るレイアウトを重視し、ソファは置かないと決め、ソファ代りにハンモックを採用。なるほど、奪い合いになるわけです。

リビングと主寝室のパーテーション代わりに設えられた室内窓。もともとあった天窓の効果もあり、天井がとても高く感じられます。また東向きの窓から差し込むやわらかな自然光が黒のフレームに縁どられ、絵画的な雰囲気を醸しているので、これが部屋全体に一層の奥行き感を与えていました。中央のテーブルに設えられたアンティーク雑貨はR夫人の好みを知り尽くした、シャークアタックさんのお見立てによるもの。


◆バルコニー
まるでカフェテラスのような、お洒落なバルコニー。備え付けのオブジェのような流木がよく映えます。「海辺で拾ってきた」なんて信じられません。超朝型のR夫人は早朝、ここでひとり時間を楽しむのが日課なんだとか。夕暮れ時、Hさんがビールを飲んで寛いだり、S君やR君が午後のお茶を楽しんだり。素敵な共有スペースです。


◆寝室
現状はR夫人の書斎兼寝室とはいえ、隙あらば誰か彼かが「陣取っている」家族みんなのお気に入りの空間だそう。壁紙は白にするか、色壁紙にするか悩み抜き、色に決めた後もブルーのトーンでまた悩みに悩んだとのこと。頼りにしているワルパさんの鶴の一声で、グレイッシュなニュアンスのあるブルーを選択。結果的に「色があったおかげで部屋全体がお洒落に見えるし、お気に入りの家具も映える気がして大正解」だったとのこと。アンティーク鏡をはじめ、R夫人の手持ちの家具と想像以上に相性がよかった模様です。


◆階段
メゾネット特有の階段を活かした空間デザインはT家の特徴のひとつ。「階段」の先にまた「階段」。「だまし絵ではありませんが、ちょっとした遊び心で奥行き感を出したかった」とR夫人。「実は高級壁紙を海外から取り寄せるまでに、約3カ月。おまけに特殊な壁紙で貼れる人を探すのにも時間がかかってしまったんです。でも、結果的に苦労した甲斐がありました」


◆ロフト&ウォークインクローゼット
この家の引っ越しと同時に就職&独り暮らしをはじめた長女Sさんの部屋。「娘のSが帰って来た時、居場所をつくってあげたかった」とR夫人。
主の留守をいまはHさんが主寝室として活用し、守っています。とはいえ、この場所も「みんなのお気に入り」で学校帰りのR君が寝床にすることもしばしば。ハシゴ下、向かって左の空きスペースはウォーキングクローゼットに改装。もともとの造りでは、この場所に台所があったと聞いてビックリ。


◆洗面所&脱衣所&バスルーム
妻のセンスに任せ、始終、寛容に見守っていた夫のH氏が「ひとつだけ自分のこだわり」として挙げたのがバスルームのシャワーヘッド。しかも「小学校のプールにあるような、上から水が落ちてくるタイプの、ひまわりみたいに大きく丸いシャワーヘッド」というユニークなものでした。家族の使い勝手を考慮し、苦肉の策で選ばれたのがグローエの水栓。
さらに御影石のような光沢を放つ、ダークグリーンの床はHさんの「清潔感のある床がいい」というリクエストにより、R夫人が悩みに悩んで選ばれたもの。
備え付けのランドリーラックは造作。「イメージ通りの仕上がりでした」(T夫妻)
  

◆トイレ 
「トイレでよく使われる壁紙」とワルパさんに勧められた本棚の壁紙。そのまま使用するのではなく、こちらも「だまし絵」のような一手間を加えるのが、R夫人流。「壁紙の棚板の厚さに合わせた本物の棚板を取り付けたいと思い、イメージ通りの板の厚さ、テイストを探すため『これじゃない、あれじゃない』と担当デザイナーの南部さんには、ずいぶん無理を言いました(笑)。ちなみにペーパーホルダーはハウズライフさんのショールムで一目惚れしたものです」
実は見落としてしまいそうな細部に、R夫人のセンスが光っている。そんなことを取材中に学習し注意深く観察して気づいたのが、トイレの窓ガラスでした。「雨垂れ」というネーミングのガラスで、これが白い扉とサニタリールームのダークグリーンにとても映えるのです。撮影中のカメラさんが「いちいちおしゃれ~」とつぶやいたほど。


◆子ども部屋
長男S君がラフスケッチを書いた子ども部屋。デスクスペースを黒の天板に白の固定棚とモノトーンでシンプルシックにまとめるアイデアはR夫人のものだそう。マグネットタイプのアクセントクロスを施した壁に固定棚を造作。浪人中のS君はこの家に引っ越してから美大を志望大学にする進路変更をしたそう。そういえば、針金の手作りオブジェが部屋のアクセントとしてあちこちに飾られていました。S君の眠れるクリエイティビティがリノベをきっかけにむくむくと目覚めたのだとしたら、とっても素敵なことですよね。
長男S君と次男R君の共同スペース。二段ベッドは「じゃんけん」で勝ったS君が下。
負けたR君が上。部屋の扉を全開にすると「家中の風が一直線に通りぬけて気持ちがいい」とR君。
育ちざかりの男子の生活動線を考え、「入れっぱなしの収納」になることを避けるため、開閉式の扉ではなく、ロールアップカーテンにしているあたりも見習いたいポイントです。


◆リノベーションを終えて
「妻にすれば、好きなことにこだわった6ヶ月間は苦労があっても苦労と思わなかったでしょうが、それにつきあわされた南部さん(担当デザイナー)は、本当に大変だったと思います。やれ幅が違う、テイストが違うと際限なく続く無理難題に、嫌な顔ひとつせずに、対応してくださって頭が下がりました。そればかりか『ダイニングのレンガの横の柱にエアコンの配管がみえると部屋の雰囲気をこわしますよね』など、本当にいろいろなアイデアを考えてくださり、提案してくれました。担当が南部さんで本当によかった。ありがとうございました」(Hさん)

「一枚のパネルを見て選んでいても、面積広くなった全体の印象は素人ではやはりイメージが湧かないんですよ。『そんな時に床は暗くてもいいけど、天井は明るい方がいいですよ』など何気ないプロのアドバイスに何度も助けられました。南部さんを中心に壁紙、照明とそれぞれの立場から私にはない発想をもらって、みんなで作り上げた家という気がします。本当にとてもいい出会いに恵まれ、感謝しています」(Rさん)

「前の家より敷地面積が狭いと聞いていたのでどうなるかと思っていましたが、いまの家のほうが広く感じられるのが不思議です」(長男S君)

◆担当デザイナー 南部瑛美より
「ロフトの提案など、メゾネット特有の高低差のある構造を活かしたデザイン設計を提案できて、とても楽しかったです。ありがとうございました」

 (◎写真 花井智子 ◎ライター 砂塚美穂)